刃物職人

包丁の製造工程は、大きく分けて鍛冶、研ぎ、柄付けの3工程があります。
堺打刃物では、各工程に「鍛冶師」「研ぎ師」「柄付師」といった専門技術を持つ職人がいる分業制が特徴です。
鍛冶師は火の仕事、研ぎ師は水の仕事、柄付師は木の仕事です。

上物師について

堺打刃物は、全国でのシェアは7%程度なのですが、業務用(プロ用)においては90%以上のシェアを誇っています。
特に、和包丁の完成度となる「鍛冶」と「刃付け」の技術力は、他の産地の追随を許しません。
堺刃物の鋼材には、日立金属の安来鋼(ヤスキハガネ)が使われるのですが、安来鋼は純度が高く、加工するのが難しい鋼です。
鋼の純度が高いほど、焼き入れ※の適正温度の範囲が狭いため、「焼き入れ不良」がでやすいのです。
その一方、うまく焼きが入ると、とても切れ味の鋭い、いい包丁に仕上がります。

この安来鋼の中でも、さらに白紙1号2号といった高炭素・高純度の鋼を扱える職人さんは「上物師」と呼ばれます。
彼らが手がける「上物」は、加工も難しく、手を抜けない仕事のため、生産される本数が限られています。
その技術は、堺刃物600年の歴史の結晶なのです!
しかし、そんな上物師さんたちも今はもう僅か数名・・・。

技術を途絶えさせないためには、料理人さんに、その価値をしっかり伝えて、実際に使ってもらうこと。
「上物」は、販売価格で一本10万円以上するけれど、製作工程や技術の高さからすると、決して高くはないはずです。
※焼き入れ・・・鋼に硬度を出す(切れ味を出す)ために、約800度に加熱し、その後、水冷または油冷によって急冷させる作業