「包丁」という道具は、どのように生まれ、どのように進化してきたのでしょうか。

モノづくりの原点にまでさかのぼり、
1.鉄の起源
2.人類と刃物
3.日本の包丁
4.たたらの歴史
という4つの流れで見ていきます。

今回は2つ目、人類と刃物についてです。

 

2.人類と刃物

いよいよここから、人類と刃物の時代へと入っていきます。
まずは、人と石との関わりから。

■人類の誕生と石

火や刃物がない時代、人類は「生」の食べ物を歯や指でちぎって食べていました。豊富な植物が密生していたアフリカ、東南アジア、中南米の地域は植物性植物、残りの地域はバナナなどの自生植物を食べていました。
火の使用ができるようになった時代では、偶然見つけた動物の死骸や海岸に打ち上げられた魚などを、食べられるようになり、それらの食べを切り裂くために硬い石が使われるようになりました。
今ではイメージしにくいですが、古代の刃物といえば「石」なのです。
ちなみに、日本の遺跡から見つかる刃物も、ほとんどが石だそうです。

■石器の発明

「ヒト」の特徴のひとつは、「道具を作る」ことにあります。猿人→原人→旧人→新人と人類の進化とともに使われた道具は「打製石器」でした。

旧石器時代の指標となる打製石器はまた、礫石器→握斧→剝片石器→石刃と進化していきます。

これが、さらに磨製石器(石斧・石鎌・石包丁)を生み出し、のちの刃物へと発展していくのです。

■人類の誕生から石包丁まで

・700万年前(前期旧石器時代)
人類(初期猿人)がアフリカに登場 (※諸説あり)

・440万年前(前期旧石器時代)
猿人(アウストラロピテクス)が二足歩行をはじめる
⇒打製石器(礫石器※1)の製作

・180万年前(前期旧石器時代)
原人(ジャワ原人や北京原人)が登場。火の使用や言葉の使用がはじまる
⇒打製石器(石核石器※2、握斧※3)の製作

・50万年前(中期旧石器時代)
旧人(ネアンデルタール人など)が登場。肉食が一般化、埋葬の風習がはじまる
⇒打製石器(剝片石器※4)の製作

・20万年前(中期~後期旧石器時代)
新人(ホモ・サピエンス)の登場。

・4~3万年前頃
⇒打製石器の精巧化(石刃※5)
鋭利なフリント石(火打ち石:チャートの一種で非常に硬いが加工しやすい)
黒曜石(天然のガラスで、割れ口は貝殻状)など


(黒曜石の矢じり)

・9000年前(新石器時代)
農耕・牧畜はじまる→生産経済へ 土器の普及、織物(羊毛や麻)の始まり
[磨製石器(石斧・石鎌・石包丁)]

・5000年前「鉄器時代」へ
都市国家の成立、文字の発明、青銅器の使用、職業が分化し階級区分の発生

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※1:礫石器(れきせっき)
自然石の一部を打ち割って作った石器

※2:石核石器(せっかくせっき)
原石(母岩)から剥片を剥がしとったあとにのこった芯材(石核)から作った石器

※3:握斧(あくふ)
石核石器の一種で、ハンドアックスと呼ばれる
石のまわりを全面的に打ち掻いて、手で握るよう整形した石器

※4:剝片石器(はくへんせっき)
石核ではなく、原石から剥がされた石片を利用して作る石器

※5:石刃(せきじん)
石の面に連続して打撃を加え、多量の石刃を剥離させる高度な技術の石器

※6:石包丁
弥生時代、穀類の穂を摘み取るのに用いた石器。
長さ10数センチ、幅数センチで、板状の石を加工した磨製石器で長さは十数センチの半月形をしたものが多い。ひもを通す穴があいている。

参考動画)石包丁による弥生時代の稲刈り(NHK for School より 1分16秒)

 

次回は、3.日本の包丁に続きます。