砥石は、包丁の性能を最大限に引き出し、切れる状態にしてくれます。
とはいえ、砥石なら何を使ってもいいわけではありません。
どんな鋼材の包丁を研ぐのか、どんな刃を付けたいのか、どんな作業をしたいのか、によって、選ぶ砥石が変わります。砥石には色々な種類があるので、初めて砥石を購入される方はどれがいいのか迷ってしまいますよね。
そこで、砥石選びの方法を、2回に分けてご紹介します。
初回の<はじめて編>では、初めて砥石を購入される方や、簡単な選び方を知りたい方に向けての内容をご紹介します。
【1】天然砥石と人造砥石の違い
【2】砥石の番手で選ぶ
こちらを読んでいただければ、必要な砥石が選べるようになります。
【1】天然砥石か、人造砥石か
砥石には大きく分けて天然砥石と人造砥石の2種類があります。
違いとしては、
・天然砥石=山から硬い地質の岩石を採掘したもの
・人造砥石=研磨剤を結合材で固めて作ったもの
となります。
天然砥石は、荒砥・中砥の採掘がほぼ全て終了し、天然砥石といえば「仕上げ」を指します。仕上がりの良さが魅力ですが、希少で価格も高めなので、仕上げにこだわる方向けです。
現在、一般的に使われるのは人造砥石です。人造砥石は性能にムラが少ない点と、天然砥石に比べて価格が安い点が魅力です。
ここでは、人造砥石の選び方について説明していきます。
【2】砥石の番手で選ぶ
●砥石を選ぶときに、一番重要なポイントが砥石の番手(粒の粗さ)です。
人造砥石では、「#」のあとに数字を入れて、粒度の違いを表します。
番手は#80〜#10000以上まであり、数字が小さいほと粒度が粗く、数字が大きくなるほど粒度は細かく(きめ細かく)なります。
この「#」というのはまさに網目を表し、2.5×2.5角の網目(#)に、どれくらいの数の粒が入っているかによって番手が決まります。#80の場合は80粒しか入らない=粒のサイズが大きい。一方、#10000の場合は、10000も粒入る=粒のサイズがとても小さい、ということです。
つまり、砥石の容量に対して、どれだけの砥粒が含まれているかの指標です。
イメージがわきましたでしょうか?
砥石は、番手の違いにより次の3種類に分かれます。
「荒砥石」「中砥石」「仕上砥石」です。
●料理人の方々が使う砥石としては、以下が目安となります。
荒砥 #220〜#400
中砥 #800〜#2000
仕上げ #3000〜#10000
最初の一本には、#1000番の「中砥石」がおすすめです。
▶︎「荒砥」は、包丁の欠けを直したり、刃の形状を修正するための砥石です。
表面がザラザラしていて、非常に研磨力(研削力)が強く、よく研げます。刃が厚く、刃先が丸くなってしまった包丁の「中抜き」(刃全体の厚みをとる)としても使います。ただし、荒砥は刃の表面に深い傷を入れてしまうので、研ぎ過ぎには要注意です。
▶︎「中砥」は、包丁を切れる状態にする砥石です。
#1000が一般的です。刃先のラインを作ったり、包丁の切れ味が落ちてきた時などに使います。また、刃こぼれの修理で荒砥を使用した後には、この中砥石でキズを取っていきます。#2000は「中仕上げ砥」とも呼ばれます。
▶︎「仕上げ砥」は、切れ味を良くするための砥石です。
研ぐというより、刃の表面を磨くというイメージです。和包丁の「小刃付け」で刃先の耐久性をあげたり、「裏押し」に使うのはこの砥石です。砥石の表面はツルツルしているので、研磨力(研削力)は弱いですが、特に切れ味が重視される和包丁では、仕上げ砥を使うことで、料理の見た目や味に変化をもたらします(注:研ぎすぎてしまうと逆に切れ味を悪くすることもあります)。
※炭素鋼なら、数日間使用した包丁でも、2〜3分程度の仕上げで切れ味が回復する場合があります。
#8000〜#10000は「超仕上げ」と呼ばれ、特に切り口のツヤや見栄えを重視する場合に使用されます。この最終の仕上げには、天然砥石を使われる方もいます。
次回の後編は包丁の選び方<こだわり編>として、
【3】砥石の製法や素材を知る
【4】包丁の材質や用途に合わせて選ぶ
をテーマに、さらに砥石選びについて詳しく知りたい、研ぎの技術を向上させたい、という方に向けての内容になりますので、ぜひお読みください。