本焼とは?

 和包丁には、軟鉄(地金)でできた本体に硬い鋼(刃金)を貼り合わせた「合わせ包丁」と、刃全体が硬い鋼(ハガネ)でできている全鋼製の「本焼包丁」があります。一般的に、合わせ包丁は「霞(カスミ)」、本焼包丁は「本焼き」と呼ばれています。本焼きは、非常に硬くて歪みが少なく、見事な切れ味とその持続性、ツヤのある切り口の美しさが特徴です。日本刀の焼き入れと似た製法のため、高い技術が必要となり大変高価です。鋼を硬くする焼入れ時の製法の違いにより「水本焼」「油本焼」の2種があります。

 本焼の場合、焼入れで全体に焼きが入ってしまうと熱処理後に歪みとりができなくなるので、刃身全体に砥粉や土を厚く塗り、刃道に近い部分は薄くします。こうすることで、刃の部分だけ硬く焼きが入ります。(塗った土の掻き落とし方が日本刀の焼入れと似ていることが「本焼き」の名の由来だと言われています)

本焼包丁の始まりについては、

 「『堺刃物組合連合会史』(昭和53年3月堺刃物組合連合会発行)によれば、伝統的堺包丁の特色は鋼と地金の組み合わせにあり、まず着鋼の片刃包丁があり、その欠点を補うべく明治初期の廃刀令で刀が造れなくなった刀鍛冶が、日本刀の技術で包丁を作ったのが本焼包丁のはじめである」

(『刃物あれこれ』p.49)

とあります。

水本焼と油本焼

水本焼とは

 包丁の中でのトップランクとなり、料理人あこがれの包丁です。焼入時の冷却方法で水を使うものを「水焼き」といます。水で一気に冷却することにより、鋭く繊細な切れ味が出ます。10本作るうちの数本は割れが出てしまうほど熟練の職人でも作るのが難しく、高度な技術と勘を要するため、価格も高価なものになります。包丁の中では最上の切れ味を誇りますが、手入れや研ぎなどが難しい包丁です。非常に硬いため、衝撃に弱く、ひねったり無理に力を加えると、刃が欠けたり、真っ二つに割れてしまうこともあります。
 水本焼に使われる鋼材は、白一鋼、白二鋼、青一鋼、青二鋼があります。現在水本焼を製作できる職人がわずかなため、ご注文頂いてから納品まで、数ヶ月〜1、2年かかる場合がございます。

油本焼とは

 次に油本焼ですが、こちらは焼入時の冷却に油を使います。水よりもゆっくりと柔らかく冷却するため、水本焼より柔らかく(と言っても本焼なので硬いです)、扱いやすい包丁となります。とても美しい波紋が特徴的です。
 ふぐ引包丁など、少ししならせて使うのが好きな方には、こちらの油本焼が人気です。水本焼と同様、製作できる職人が少ないため、本数が限られ、納品までお時間がかかる場合がございます。
油本焼に使われる鋼材は、白鋼となとなります。